2016(平成28)年度の研究会

28年度 第4回 研究例会

 

■開催概要

・日時:2017年 3月11日(土) 13:30 ~ 16:00 (14:50-15:00 休憩)

・場所:エルアージュ(L-AGE)小石川 2F 集会室

    文京区小石川1-17-1 クイーンズ伊勢丹上

 

「非母語話者日本語教師とはどのような人たちなのか」

 

世界の日本語教育現場において日々活動しているネイティブの日本人日本語教師、そしてノンネイティブの現地人日本語教師達。今回は両者による「“協働”の大切さ、難しさ、面白さ」をテーマにして、スリランカとグアテマラの事例としながら、議論を行っていきます。

 

発表者:高田麻由、新井克之

内容 :発表者による発表のあと、テーマに基づいた学習会を予定しております。

(前半の発表と後半の発表の間に、15分程度の休憩時間を取る予定です)

司会 :新井克之(当会世話人)

 

なお、この研究例会は学術発表ではなく、学習会です。

 

1.非母語話者日本語教師とはどんな人たちなのか

―スリランカ人日本語教師へのインタビューから―

発表者 高田麻由

 

【趣旨】

 海外の日本語教育現場では、日本語が母語ではない日本語の先生方、いわゆる非母語話者日本語教師の先生方が多く活躍されていらっしゃいます。日本人日本語教師が海外で活動する場合、そういった非母語話者日本語教師の先生方と協働することがよくあります。

 わたしは、青年海外協力隊員として2013年6月から2年間バングラデシュ、2016年7月から5か月半スリランカで日本語教育に従事しました。日本語も通じるし、同じ日本語教師だし、と思っていると、思わぬ衝撃を受けることが少なくありませんでした。それはもちろん、わたしがそこは外国なのだということ、相手が異文化に生きているのだということを理解できていなかったからなのですが、一緒に過ごしていくうちに、次第にその衝撃は何が理由になっているのか、わかるようになってきました。

 もっとよく先生方のことを知りたいと思ったので、スリランカでは中等教育機関で日本語を教えているスリランカ人の先生5名へのインタビューを行いました。今回の定例会では、このインタビューから非母語話者日本語教師の実像に迫りたいと考えています。また、相互理解を深めるためには、何を明らかにしていかなければならないのかを皆さまと一緒に探りたいと考えています。

 

2.非母語話者日本語教師とはどのような人たちなのか 

-グアテマラ人日本語教師へのインタビューから-

発表者 新井克之

 

【趣旨】

グアテマラで日本語を教えているグアテマラ人現地日本語教師3名へのライフストーリーインタビューを行いました。彼らの生い立ちから今現在の日本語教師となるまで、彼らのライフコースの変遷を辿ることにより、非母語話者日本語教師の実像に迫りたいと思います。

 

3. 意見交換

 発表者や会場の皆さん、そしてオンライン配信をご覧になる方々と、情報共有や話題提起などを含む意見交換を行う予定です。

 

 参加費:300円

費用は資料代・会場代として使用させていただきます。

 

【こちらで録画がご覧になれます】

https://www.youtube.com/watch?v=CzGiC-XjV-I

 

 

28年度 第3回 研究例会

 

  第Ⅰ部は荒川友幸氏による発表「『相互理解のための日本語』再考 ―ロシアでの事例を中心に―」  

 第Ⅱ部は進行役つき意見交換会とします。オンラインからの参加もあります。

 

■開催概要

・日時:2016年 12月10日(土) 13:30 ~ 16:00 (14:50-15:00 休憩)

・場所:エルアージュ(L-AGE)小石川 2F 集会室

    文京区小石川1-17-1 クイーンズ伊勢丹上

 

第Ⅰ部 発表会 (発表+質疑応答)

発表 : 「相互理解のための日本語」再考 ―ロシアでの事例を中心に―  

発表者 :荒川友幸氏 (元国際交流基金日本語教育専門家)

 

 教室で学んでいる人だけでも海外の日本語学習者は365万人もいますが(2015国際交流基金調べ)、その多くの外国人は、どのような動機、どのような目標をもって日本語を学ぶのでしょうか。

「海外の日本語教育は何のためか?」 これは、繰り返し問いつづけられる最重要テーマのひとつだと考えますが、今回は、その“第1弾”として、それをとりあげます。

 発表者の荒川さんは、JICAの日本語教育専門家、国際交流基金の専門家を何度も経験なさったベテランですが、上記の問題に非常に強い関心をお持ちです。

発表後は、質疑応答、そして、参加者の皆さんの実践報告なども交えて自由な意見交換を行います。

 


 荒川友幸さんによる問題提起文

 

 筆者はこれまで30年日本語教育に従事してきた。このうちの17年は海外の諸国で過ごし、日本国内の日本語教育と海外のそれの違いについて思考を重ねた。

 そのきっかけとなった出来事は2002年筆者が国際交流基金カイロ事務所に日本語教育専門家として勤務していたときに起きた。この年、筆者はセミナーを主催し、日本から著名な初級教授法の専門家を招聘して初級レベルの日本語教授法について講演をしてもらった。この講演はたいへん実践的な、興味深いものであったが、終了後、中東のある国で日本語を教える日本人の日本語教師が立ち上がり、自分の教育現場でこの講演の内容をどのように役立てたらいいかわからないと遠慮がちに述べた。彼は大学で第2外国語としての日本語を教えており、受講生たちは総学習時間40時間で日本語学習を終了する。そして次の学習者のグループがやって来る。40時間と言えば、一般的な構造シラバスでの学習範囲は、名詞文、形容詞文、存在文、所在文と基本的な自動詞文、他動詞文程度であろう。つまり、この機関における日本語学習者は闊達な言語使用ができるはるか以前の段階で言語学習を終了することが決まっている。しかも、この教員が教えている国には日本人居住者はほとんどおらず、日本人観光客の来訪もほぼ皆無であるため、日本語の受講生たちが実際に日本語を使う機会はほとんどない。このような状況で、この良心的な日本人教師は、自分は何のために日本語を教えているのか、自分の存在と自分のやっていることは人の役に立っているのかと日々考えるようになってしまった。筆者は、この出来事を通して、日本国内の日本語教育の方法論をそのまま海外にそのまま当てはめることはできないということをはっきりと認識した。

 筆者も1992年から1994年までパプアニューギニア(PNG)の高校で日本語を教えたとき同様の体験をした。PNGも日本人居住者、観光客ともに非常に数が少なく、日本語学習者が日本語を実際に使う機会はほとんどない。このため、学習を始めた学生たちは複雑な文法のシステムや外国語学習に必然的に付随する暗記の煩わしさに触れて、勉強を始めて1週間で日本語に対する興味を失ってしまう。ところが、一度勉強を始めると途中での断念は許されないので、1年間は勉強を続けなければならない。このため、教員はまったくやる気のない学生を相手に1年間日本語の授業を続けなければならない。そこで、筆者は日本語の勉強への比重を軽くし、頻繁に日本大使館広報ビデオを借りて学生に見せ、英語で解説するなど、文化紹介に力点を置いた授業をすることになった。

 学習者の動機付けの低さ、拡散的な学習時間、日本語に実用的価値がないことなどの問題は海外の日本語教育に従事する教員の多くが直面し、それに突き当たったときの虚無感、無力感は様々な意見陳述の場において繰り返し、繰り返し表明されてきた。

 一方、2009年に出版された『JF日本語教育スタンダード試行版』で、「JFスタンダードは、基金が『相互理解のための日本語』教育の政策や目的、理念を枠組みとして提示し…」とか、「『相互理解のための日本語』は、国籍や民族を超えた日本語使用者のコミュニケーションに資するものである。日本人と外国人のコミュニケーションばかりでなく、外国人どうしが日本語でコミュニケーションするというケースも含まれる。」とかいう記述がある。

 日本語および日本語教育に対するこうした意義付けは、上に述べた海外の日本語教育の困難な状況と乖離しており、海外で教える日本語教師の多くに誤った方向付けを与え、彼らの自己効力感をさらに減衰させる危険を孕む。

 海外で、「相互理解のための日本語」を使用する状況が成立するのは、一部のコミュニティの中だけに過ぎない。海外の日本語学習者の多くは、日本語での闊達なコミュニケーション能力を獲得するはるか以前の段階で、日本語学習を休止する。休止した後、何年かすれば、彼らは日本語を完全に忘れる。そういう人たちに日本語を教える意義は何か?

本発表において、筆者はこれについて考察し、海外の困難な状況における日本語教育が持つ独自の意義を提示したい。

 

第Ⅱ部 学習会(進行役つき意見交換会)   

実践事例報告と意見交換

 

 荒川さんの発表を受けて、他の国・地域の活動経験者が実践事例を報告し、その後率直な意見交換を行い、参加者の学びの時間としたいと思います。今回は会場と海外の現場をインターネットでつないで意見交換を行います。

 

【進行】

佐久間勝彦(当会世話人)

【パネラー(五十音順)】

荒川友幸さん(ロシア、エジプトなど)

池津丈司さん(ブラジル、エジプトなど・オンライン参加)

坂下太一さん(トンガ)

村上吉文(モンゴル、サウジアラビアなど・当会世話人・オンライン参加)

海島健さん(バハレーン・オンライン参加)

その他

 

 

こちらで録画がご覧になれます。

https://www.youtube.com/watch?v=oUpc5YNMcjQ

 

28年度 第2回 研究例会

 

■開催概要

・日時:2016年 9月17日(土) 13:30 ~ 16:00 (14:50-15:00 休憩)

・場所:エルアージュ(L-AGE)小石川 2F 集会室

    文京区小石川1-17-1 クイーンズ伊勢丹上

 

「任地とつながり続けよう -追跡調査の可能性-」第2弾

ファシリテーター: 高嶋幸太

発表者: 坂下太一、黒田直美

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青年海外協力隊日本語教師として派遣され、論文執筆の調査のためにかつて勤務していた日本語教育現場を再訪したお二人の話を伺います。その後、発表者と参加者の方々による活発な話し合いの機会を設けることによって、今日の海外日本語教育研究法の可能性を押し広げる議論の形成を目指します。(前半の発表と後半の発表の間に、15分程度の休憩時間を取る予定です)

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 1.  ニカラグア日本語教育の歴史を探る!

  ~任地とつながり続けることの意義を求めて~

  発表者 黒田直美(中米:ニカラグア)

 

 青年海外協力隊は、2年間という期限付きのボランティア活動です。しかし、任期を全うして帰国したらそれで終わりなのでしょうか。隊員としての経験を、人生の宝物として自身の中で思い出にしまっていいのだろうか-そんな疑問から任地の日本語教育史を紐解きたくなり、歴代隊員を訪ねながら追跡調査をしています。任地と繋がり続けることの意義について、皆様と意見交換できればと思います。

 

2. トンガ人日本語教師の自立支援に関する考察

  ~日本人ボランティア教師とのダイアリー交換の分析を通して~

  発表者 坂下太一(大洋州:トンガ)

 

 青年海外協力隊の活動成果は多数報告されていますが、教育分野の活動成果は

目に見えるものばかりではありません。そのため、私のように、帰国後も「2年間の派遣期間中に自身はどのような役割を果たすことができたのか?」「隊員経験をどのように今後に生かすのか?」という悩みを持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。研究を通して任地と繋がり続けることで、派遣中や帰国直後では気付かなかったことも少しずつですが明らかになってきました。「実益に結びつかない日本語教育」を行っているトンガ王国の研究活動を紹介し、皆様にご意見をいただきたいと思います。

 

3. 意見交換

 発表者や会場の皆さん、そしてオンライン配信をご覧になる方々と、情報共有や話題提起などを含む意見交換を行う予定です。

  

ライブ配信ページ

 

28年度 第1回 研究例会

 

開催概要

・日時:2016年 6月11日(土) 13:30 ~ 16:20 (14:50-15:00 休憩)

・場所:エルアージュ(L-AGE)小石川 2F 集会室

    文京区小石川1-17-1 クイーンズ伊勢丹上

 

 

「海外の中等教育段階での日本語教育」

                                                                        ファシリテーター:佐久間勝彦  

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 教室で学んでいる人だけでも400万人近くを数えると思われる海外の日本語学習者のうち60パーセント以上は中等教育段階の生徒たちですが、今回は、その教育の意味、現状、背景、課題などについて考えます。海外で最多の分野である中等教育ですから、それに携わった経験のある方々が多くいらっしゃるはずです。

 まず第Ⅰ部では、そんな皆さんに数多く集まっていただいて問題や課題を共有したいと思います。どうぞふるってご参加ください。

 次に第Ⅱ部では、青年海外協力隊の長い歴史の中でも同種の教育機関への日本語教師派遣が100名を超えるという他に例を見ないマレーシアを取りあげ、発表と質疑応答を行います。発表者は、35年ほど前にマレーシア中等学校派遣の初代隊員の一人としてその立ち上げに尽力し、数年前には国際交流基金上級専門家として直接的間接的に同国の中等教育支援に携わった現青年海外協力隊技術顧問の坪山由美子さんです。

 坪山さんの発表後、参加者の皆さんとで、第Ⅰ部の話もふまえて、中等教育段階での外国語学習の意味、日本語教育の意義・面白さ・難しさ、期待される研究の課題や方法、海外の中等教育に携わる本人日本語教師の姿勢・責任・課題・その“喜怒哀楽”などについても自由に話し合いたいと思います。

 さまざまな国・地域の、さまざまな日本語教育の、それぞれの現場に固有の特徴、共通する要素、過去の事例から見えてくるもの、現在的意義、評価(点検)、今度の課題などを確認しましょう。できれば今回の例会を、いわば、海外の中等教育段階での日本語教育の“総括”、そして研究の“事始め”とすることができたらよいと思います。

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第1部 意見交換会「さまざまな国の中等教育段階の日本語教育」 

第2部 発表「マレーシアの中等教育段階の日本語教育」 

         発表者:坪山由美子(青年海外協力隊技術顧問)

 

発表の主な内容

①なぜJOCV日本語教師だったのか (JOCV派遣になったいきさつ)

②マレーシアの日本語教育を支えたのは何か(マレーシア中等教育の日本語を支えた体制)

③JOCV教師からマレーシア人教師へ、どのようにバトンタッチされたのか

  (JOCV教師からマレーシア人教師への移行過程)

④これからを推測する(現在的意義・今後の課題)

 

参加費:300円
費用は資料代・会場代として使用させていただきます。

 

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