日本学術会議会員任命拒否に対する声明

標記につきまして以下の通り声明を発表いたします。

日本学術会議会員任命拒否に対する声明 

 

 内閣総理大臣による日本学術会議会員候補の任命拒否を憂慮し、同会議の推薦どおりの速やかな任命を強く求めます。

 

 日本学術会議第25期の新会員選考にあたり、菅義偉首相は、学術会議が推薦した新会員候補の一部を任官拒否しました。総理大臣による法に基づかない行政執行は、日本学術会議法の立法趣旨はもちろんこれまでの政府答弁等に見られる法解釈を逸脱しており、人事への介入という重大な事態と考えられます。

 会員の適否を政治権力が決められれば、学術会議の独立性、自律性が脅かされ、憲法23条が保障する「学問の自由」の侵害につながりかねません。

 

 「海外日本語教育学会」は平和な国際社会の構築につながる日本語教育を希求する活動を続けています。先の大戦で日本語教育が国家権力に利用された歴史を顧みると、法的手続きに従って推薦された候補者を明確な理由の説明もなく政府が拒否するという今回の措置は、法解釈として違法行為であるばかりか、国内外における日本語教育が今後政治権力によって脅かされる危険性を想起させます。それは、教育・研究等の独立性を損ない、さらには学問・表現の自由の制限に及ぶおそれがあります。

 また、国会答弁等における政府関係者の「総合的・俯瞰的活動を確保」、「偏っている」、「閉鎖的、既得権益」等の語の用い方、繰り返される意味不明の答弁、「お答えを差し控えます」といった事実上の答弁拒否等は、日本語そのものの破壊と感じられます。日本語を話す「日本国民の代表」であるはずの内閣総理大臣がこのような意思疎通の達成や相互理解の形成を軽視する言動を、世界が注目する国会の場で繰り返しているようでは、日本語で理解し合おうと日々努力している世界の日本語学習者たちの学習意欲を大きく損ねることになりかねません。日本語教育に携わる私たちに看過できるものではありません。

 

 私は以上を深く憂慮し、任命を見送られた学術会議の推薦候補者の速やかな任命を強く求めるものです。なお、学術会議の在り方についての議論は、任命後にすればよいことです。

 

2020年11月23日 海外日本語教育学会 会長

佐久間 勝彦

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